2013年4月6日土曜日

7月26日(木)台所でクヌーデル作り

マルチンさんが「ようこそ、いらっしゃいました」と挨拶して乾杯。その後、クヌーデル作りをした。
マルチンさんは、夏はハイキング・ガイドを、冬はスキー・インストラクターをしながら、農牧畜業、林業などの力仕事を担当し、今日はクッキングの先生だ。

「都市化した町はともかく、チロルに住んでいる人々は、生きていくための労働はなんでもします」と、マルチンさんは言う。

玉ねぎを刻んで炒め、茹でたジャガイモを潰し、ヨーグルトやバター・塩・コショウで味付けし、全部を捏ねてお団子にする。泥遊びのお団子を連想して、なんと無邪気な楽しい作業だったことか。マルチンさんの手際のよさに、一同感嘆した。

驚いたのは、一見、ごく普通の調理台なのに、薪を使っていることだ。
調理台のいちばん下の引出しは、短く切った丸太の貯蔵庫兼乾燥庫。
その上の段は、空気を取り入れて薪の火力調節をし、燃えかすが溜まる場所。
3段目で、薪を燃やす。
その上の調理台の表面で、湯を沸かしたり、鍋で調理したり、場所によっては温度の違いを利用して、鍋やヤカンを置いて保温している。
ガスや電気は一切使わないけれど、なんの問題もなく、調理ができる。
高齢世代の多い仲間は、「薪の調節は大変だったけれど、竈の仕組みと同じねえ」と、数十年前の日本の台所を懐かしんだ。

味付けされたクヌーデルのスープ、オーブンで焼き上げた牛肉、サラダ。
持ち寄ったワインを傾け、素晴らしいディナー・パーティーだった。

食後の片付けでびっくりしたのは、皿やグラスを食器用洗剤に漬け、そのまま洗わずにふきんに伏せたこと。口に入れても問題ない洗剤を使っているのだろう。
「日本人は、食器をゆすがないなんてことできない・・・」とお互いに呟いた。
うん。エコの奨励や、衛生・清潔などの感覚には、国民性・思想が色濃く現れる。日本人は、なんでも「水に流す」のがお得意な民族だし・・・。

夏時間で8時を過ぎても、まだ明るい太陽が頑張っている。別れを惜しみながら、駅までマルチンさんが見送ってくれた。
下車した時には気づかなかったけれど、ライフェンは無人駅で、私たちのグループ以外の人影はない。

汽車が来るまで、夫はマルチンさんから駅周辺の様子を聞いた。
ホームの目の前の林は国有地だが、マルチン家が管理する権利を先祖代々、世襲で受け継いでいる。

ただ、鉄道沿線に沿う幅10メートルほどは、安全な列車運行をする鉄道会社の責任で、樹木が風や雪で倒れると、本当は鉄道会社が片付けなくてはならない。実際はそれが難しいので、代わりにマルチンさんが人を雇って伐採し、それに必要な人件費を鉄道会社に要求して支払ってもらう。
管理している林の木を伐ると、同じ本数の木を補充して植えることになっている。マルチンさんの裁量で伐採した木材は、出荷したり、自家用にしたりして、マルチンさんの収入になる。

下草が刈られ、手入れされた森林の管理が、こうした林業の仕組みで行われていることを知り、興味深かった。古くからの伝統を守る生活が維持され、過疎化とは無縁だからこそ、こうした林業も健在なのだと感じた。

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