2013年3月13日水曜日

7月24日(火)行きはよいよい、帰りはこわい

夫は、「同じ道を下るのは面白くないよ。地図で見ると、山上駅への別ルートがあるし、上りよりは下りはたいしたことないから・・・」と言う。「それもそうねえ」と、上りの道を思い出しながら、1時40分に下り始めた。

ところが、想像を裏切って”たいしたこと”だったのだ。
歩き出すと間もなく、下を見れば目が眩むような崖のつづら折りの道になった。特に折り返す部分は絶壁で、一歩踏み外せば、谷に落ちて行くような錯覚で、恐怖だ。すれ違う人がいると、やっとのことで山側にへばりつく。大小の岩や砂礫で滑る道だから緊張する。大きな岩のある段差を降りるために、脚をいっぱいに伸ばしても届かない。滑るように足場を探って、やっと進む。

喉の渇きすら忘れて、緊張しながら50分ほど歩いた頃、復路半ばにある山小屋「ボッシュエーベン・ヒュッテ」が現れ、ホッとした。
この山小屋は夏の時期だけの営業で、尾根を行くハイカーが宿泊する設備があるし、食事を提供している。
そこで飲んだアップルジュースの美味しかったこと! さっきまでの必死な気持ちは失せ、周囲をのんびり眺める余裕が生まれ、人心地を取り戻した。

ところが、山小屋前の道に急ぎ足の4人の親子連れが現れ、「あと40分で、最終のゴンドラが出るよ」と言いながら、たちまちに遠ざかって行った。
さあ、それからは必死に歩いた。地図を見るとかなりあり、弱音を吐く暇もない。息を切らせ、歩きに歩き、とうとう、「インスブルック行きに乗れなくてもいい」と居直った。同じように先を急ぐグループが、次々にやって来る。
夫は「こんなにたくさんの人がいるのだから、ゴンドラが待っているよ。頑張れ」と叱咤激励する。

発車ぎりぎりに間に合ったゴンドラは、満員だった。
「もうハイキングは金輪際しない」と呟いたが、満足気な人々を眺めながら、スリルに満ちた素晴らしいハイキングだったとも感じていた。夫はしみじみと「あんたさんには、たいしたことだったねえ。大誤算だったけれど、結果はよかったでしょ」と笑った。

5時過ぎにホテルに無事に帰り着いた。
膝や踝が痛み、太腿からふくらはぎにかけて脚がつる。日焼けでお猿のお尻状態に赤くなった顔。シャワーを浴び、湿布をペタペタ貼り付け、疲れ果てて、夕食を食べる元気も出ない。なんとも大変な1日だった。

改めて地図を見直すと、午後のハイキングの道が、7月6日午後に出かけたトゥールファインアルムからフィガーシュビッツェを経て、ボッシュエーベンヒュッテに通じていることがわかった。ツィルベンヴェーク(霜降り松の道)として人気があるハイキングコースで、その半分を歩いたのだと知り、苦行?の成果を理解した。

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