2012年3月21日水曜日

スークで庶民の暮しを垣間見る






【アブラ(渡し舟)でクリークを渡り、スーク(市場)へ】


ドバイ ② 3月21日(月)午前

海岸沿いの道路(E11号線)を走っていると、興味を引くものが次々に現れる。ガイドの説明を聞きながら、眺めるのも、けっこう忙しい。
「あそこが、ドバイ・メトロの入口ですよ」と聞いたときには、すでに通過している。メトロは、三菱商事・大林組・近鉄車両の共同で、2009年秋に完成。完全自動のハイテク鉄道で、もちろんUAE内では最初だ。すでに日本企業200社が進出し、技術力が評価されて、UAEの近代化に貢献している。ダウンタウン・ドバイの辺りは、高く天を突くビルディングが林立し、最近まで砂漠地帯だったと想像するのが難しい。

かつて交易の中心だったドバイクリークで、観光バスからアブラ(水上バス・渡し舟)に乗りかえて対岸へ渡る。わずか5分足らず。クリークの上流に架かる橋を利用すると30分以上もかかるから、アブラは住民の重要な足だ。たくさんのアブラが、ひっきりなしに、競争するように往来している。乗客はアブラの中央を背に座って、のんびりと水の動きを眺めている。

「この辺りは興味深い地域で、午後にも近くまで来ます。市場(ドバイ・オールド・スーク、スパイススーク、ゴールドスーク)を歩き回るのは、日中は暑くてたいへんですから、涼しいうちにご案内しましょう。観光客や地元の人が繰り出す前の混雑も避けたいのです」と、ガイドは言う。

まずは波止場近くのドバイ・オールド・スークへ。「スーク=青空市場」に屋根があるのは、雨除けではなく、日差し除けだ。足を踏み入れると、混沌のるつぼを思わせる光景が広がっている。思わず「すごいよ・・・・」と、目を見張る。家具や台所用品。ガラス玉やビーズをあしらったサンダル。帽子やスカーフ。それらがうず高く積み上げられている。鮮やかな色彩の大胆な模様の布地がぶら下がっているし、大ぶりの装身具がところ狭しと並んでいる。なにに使うのか、得体の知れないものもある。 次第に、あまりにも雑多な品々に圧倒されて、「もう、たくさん」の気分になって来る。彼我の民族の、生きるエネルギーの差だろうか。

開店したばかりの店先では、人待ち顔の男性がお喋りに興じ、人が通ると営業用の笑顔を見せ、さかんに誘いの手を振る。通り過ぎると、お喋りに戻って行く。トルコやパキスタンなどのイスラム圏への旅でも見かけた共通した風景だ。

この一角のスパイス・スーク(香辛料市場)では、長年懸案だった”乳香”の実物を、初めて見た。新約聖書には、イエス・キリスト誕生を祝う東方からの三博士が、乳香・没薬を捧げたとある。店先に、仄かな香りが漂よっている。白い物体に火をつけて燻している。その香りだ。「欲しいわ」「買ったら・・・」と言いながら、夫婦して持参のドルは安全のために懐深くにあり、直ぐに出せない。現地の通貨以外はドルだけ使え、「ユーロならあるのに・・・」と諦める。残念。

ハイビスカス・オレガノ・バラ・ドライレモン・サフラン・・・。ナツメヤシなどのナッツ類、イチジクなどの乾燥果実が、大きい籠に山盛りになって並んでいる。砂漠の広がるアラビア半島は暑いし、乾燥している。香辛料は生活から生まれた知恵で、各種の飲料水やアラブ料理に使われる必需品なのだ。

香辛料の鮮やかな彩り、商人を含んだ店の佇まいは、格好のカメラの被写体だ。買物そっち抜けで、シャッター音が響く。いろんな香りが混じって、なんとも言いようのない特有の匂いは、記録に残らないけれど・・・。

「ゴールド・スークでは、刻々変わる世界の金の値段で量り売りしています。デザインはお好み次第で、売買の交渉の余地は十分ありますよ。アラブ系民族は金が大好きで、このスークに買いにきます。目的の買いたいものがあれば、お買い得かもしれません」。すかさず「旅の始まりに大金を使ったら、この先が続きませんなあ」と、笑いを誘う者あり。「だれが、こんな大きなキンキラキンを首に垂らすのかしら? 肩凝りしそうだわね」「趣味の問題・・・」などと言いながら、全員、見るだけ〜のウインドーショッピングをする。

ジュメイラ・モスク前など、カメラストップをしながら、昼食場所の「パレス・ホテル」のレストランへ。あまり食欲がない。刺激的なスークの毒気に当てられたのだろう。「観光は始まったばかりなのに、先が思いやられる」と呟きながら、甘いデザートと果物を選ぶと、夫は「まともなものを食べないと、ダメだよ」と、厳しい目で覗き込む。よく食べ、よく飲み、よく動く元気おじさんは、2人分、食べたから、バランスがとれる。

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