2012年3月24日土曜日

バージュ・カリファ展望階で思う






【バージュ・カリファ展望階から、北西・海岸方向を望む】

ドバイ⑤ 3月22日(火)午後

昼食後、現代ドバイの勢いを象徴する「バージュ・カリファ」へ出かける。2004年に着工し2010年1月に完成した。高さ828メートル、世界一を誇る建造物だ。人気の観光名所だから、現地の旅行社が手配しても、なかなかチケットが手に入らない。「前売りは30ドルです。当日券だと100ドルですが、チケットを買うだけで1日かかり、短い滞在ではせいぜい外から仰ぎ見るだけですね」という。入口には、入場を待つ長い列とチケットを買う人々が溢れている。

展望階に登る前の日本人ガイドTさんの解説は、悔しさの心情が漂って、印象的だった。官民一体となった韓国のサムスンが、「バージュ・カリファ」の建設入札で圧倒的に強かった。日本はある大手企業が入札したが、そもそも、金額的にも、競争力という面でも、お話にならない形でダメだったと。

入口から塔の展望階に登るエレベーターまでの長いアプローチの壁に、時間待ちをする入場者が、否応なしに眺める写真が続く。建設に携わった人たちの大きなパネルだ。延々と、自信に満ちた笑顔と韓国人の名前が並んでいる。

展望階は、建物のほぼ真ん中、高さ442メートルの124階にある。エレベーターで2分弱、あっという間に着く。東西南北360度の視界が広がっている。怖々とガラス越しに眼下を見下ろす。

広い敷地に花々が咲き乱れ、樹木の緑が溢れる大邸宅や、設計を競った近代的なビルが点在している。人工の大きな池がある。その間を縫って、高速道路のカーブが延びている。昼食を食べたレストランのあるパレス・ホテルが見える。食後に散歩した庭園内のプールが輝いている。遠くのアラビア湾沿岸には、古くからの人家が密集している。

もとは大半が砂漠だった土地に、ドバイという都市が出現した様子を想像した。
水路を引き、水を確保した場所は贅沢な空間だが、水の乏しい場所は、たちまちに生命を拒絶するような、荒々しい自然が広がっている。

これらを眺めながら、周辺の開発地域は、ドバイの現在と未来を象徴している場所だと感じた。気候や風土は変わらないのに、人々の暮らしが日々変わっていく。厳しい条件の砂漠をも変えるオイルの力に圧倒され、一方、小さく見える眼下の風景が箱庭のように見え、それが、「砂上の楼閣」という言葉と、一瞬、重なった。
展望階を歩きながら、改めて思った。

夢の近代都市実現のために、韓国企業が挑戦した投資のしたたかさと凄さ。それらをはるかに超えて獲得した韓国の評価は、世界で活躍する宣伝力となっているに違いない。格好の舞台での日本の現実は、実力を発揮する機会すらなく、いまや追いつくことができないほど遅れているのではないか。

欧米で見聞きする日本人のプレゼンテーション下手(実力の乏しさに繋がっているのだろうが)をもどかしく思い、先の見通しの厳しい日本経済、さらには現在の政治の姿を嘆きながら、気持ちが落ち込んでくる。
土地に馴染んだガイドならずとも、少なからず、悔しい気持ちになったのだった。外国に出ると、期せずして愛国者の心境になる。

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