2014年11月11日火曜日

[NYへの旅] 16.トーマスと再開

7日目  3月22日(金)その1 

アメリカで知りあった友人は、家族のいろいろな記念日をとても大事にしている。
集まって、ときにサプライズを用意して、人の繋がりを確かめている。人間関係がどんどん変化する社会では、こんな機会と場所をつくることが大事なのだろう。「アメリカ人になる」ために世界中からやってきた人々は、社会の最小単位である「家族」で支え合った。そんな伝統が生きていることを、家族が集まる記念日に感ずる。

19日のヒルダガードの誕生日に、息子トーマスから電話があった。
「週末にはロングアイランドに行くよ」とのサプライズで、ヒルダガードは大喜びした。そして今朝、朝食を終えると間もなく、トーマスが彼女(フェイ)を伴ってカリフォルニアから遥々やって来たのだ。

トーマス(47歳)は玄関に入ってくるやいなや、母親とハグを交わし、両手をとって挨拶。クリクリした目を輝かせる表情は、悪戯好きだった子どもの頃とちっとも変わっていない。
トーマスは、中東の湾岸戦争が起こった頃に高校を卒業し、まもなく海兵隊を志願した。「母親の負担を考えての彼の決断だったのよ。軍隊経験があると大学進学の奨学金を得られるので・・・」と、後にヒルダガードから聞いた。大学ではコンピューター関連のコースを学び、卒業するとカリフォルニア・シリコンバレーにある会社に就職。レーガン大統領時代、起業を決断して独立し、宇宙空間の軍事開発を構想する仕事を始めた。目下は、リバーモア研究所内にあるサンディア国立研究所に勤務している。「僕の仕事内容は、家族にも秘密だよ。もちろんヒルダガードも知らない。違反したら刑務所行きだ・・・」と、厳しい現実の一面を話してくれた。激務ではあるけれど、一方ではヨットを趣味にしているし、人生を楽しんでいる様子だ。

トーマスが30歳を迎えて以来、ヒルダガードからの手紙やメールでは、数人の女性が話題になった。「トーマスが選ぶのだから・・・」と言いながら、ときには、人間的な面で賛成しかねる複雑な心境のニュアンスもあった。
同世代のわが家の次男も結婚の兆しがなく、いずこも母親の心配と願望は同じだったから、半ば冗談まじりに「息子たちがそれぞれ結婚したら、お祝いしましょう。アメリカと日本の中間にあるハワイで・・・」と、約束していた。

ところで、同伴者のフェイは有力なパートナー候補らしい。
彼女が16歳のとき(世界が冷戦時代だった30年余り前)、両親、4人姉妹(フェイは上から2番目)と2人の弟の8人家族でフィリピンからアメリカに移住し、アメリカ国籍を得た。彼女によると、フィリピンの将来に両親が危惧して国を離れたという。
大学で薬学を専攻したフェイは、現在は病院専属の薬剤師をしている。到着早々に、掃除機を使って掃除を始めた綺麗好きの印象が強い。
「フェイは礼儀正しいし、気遣いのできる人・・・」と、ヒルダガードは言う。
ともあれ、若いふたりの登場は、刺激的な時間となった。

0 件のコメント:

コメントを投稿