2014年11月3日月曜日

[NYへの旅] 9. マルゴーを訪問

4日目  3月19日(火) その2 

夕方、ポートジェファーソンに住むマルゴーを訪問。
今週末には、彼女の100歳の誕生日パーティが企画され、私たちにも、招待状が来ている。ヒルダガードの縁で、日本からの友人という立場だ。
「当日はたくさんの人が集まるから、マルゴーとゆっくり話せない。ぜひ紹介したい私のお母さんのような人よ」とヒルダガードが言うので、興味津々だった。

台所の扉をノックすると、小柄なマルゴーが現れ、「いらっしゃーい。まあ入って・・・」と促す。早速、「さて、何を飲みましょうか?   ビール?、ワイン?、スコッチ?。アップルとトマトのジュースは、そこの冷蔵庫に入っているわ。お好きなものをどうぞ」と、矢継ぎ早にまくしたてた。
「初めまして・・・」などと儀礼的に交わすことなく、私たちが言葉を挟む暇もない。ヒルダガードを介してお互いのことを多少知っているとは言え、度肝を抜く初対面だった。

夫が「スコッチをオン ザ ロックで・・・」と言うと、マルゴーは「そりゃあ、いい。私もそれにするわ。あなた、自分で用意してね」。
どうやら、単刀直入に事を運ぶことが好きらしい。

心得ているヒルダガードが、「じゃあ、マルゴーのグラスは、私が用意するわ」と頷きながら、グラスに氷を入れてスコッチを注ぎ、ちょっと水を入れた。
「マルゴーはスコッチが大好きで、毎日飲んでいるのよ。飲み過ぎないようにね・・・」と、小声で話しながら笑った。2人の年齢差からは、”お母さんのような人”と言える。ヒルダガードがマルゴーを案ずる様子には、母親を気遣う娘の姿があり、「なるほど」と目を瞠った。

ポートジェファーソンの港を見下ろす高台にある家は、息を飲む佇まいだった。
展望のために特別に設えられた部屋からは、視界が広がっている。
大きなガラス窓を支える柱の間隔が異なっている。ちょうど額縁のような効果で、眺める角度によって変化する景色を切り取って、縦長の絵、巨大な絵を眺めるような錯覚になる。自然の景色と人工の建築設計の調和の妙だ。
海岸の左右を眺めると、複雑に切り込む入江や崖に松林が続いている。30メートルはある眼下の海岸線に、波頭が砕けている。
対岸に、コネチカットの陸地が延びている。
立ったり、座ったり、歩いたり。様々な角度からの眺望が素晴らしく、感動!。

ここで1時間ばかり、カモメが舞う様子をガラス越しに眺めながら、いろんな話が弾んだ。マルゴーがよく話し、お説拝聴で圧倒されたが・・・。

「この高台を気に入って、画家だった夫(フランク・ロス)が、アトリエを建てた。彼は、絵を描くイマジネーションがあると、ここを自慢していたわ。
積極的に絵を売ることはせず、買い手が決まると、同じ絵を描いて必ず手元に残したから、経済的にはたいへんだった。彼が亡くなったとき、ここは足の踏み場がないほど絵の具で汚れていた・・・」。
マルゴーの語りには、追憶に浸っている風情が感じられ、意外だった。

「先日、ドイツを旅行中に病気になったの。帰ってから診察してもらったら、心臓に問題があると言われてね。ほとんど良くなったけれど、無理ができなくなった。最近は、外出の運転や家事は、人に頼むことにしているわ」。

個人的な話しから、巷のことも話題になった。このところ、アメリカで大きなスキャンダルとして報ぜられているカトリック司教が話題になったとき、マルゴーは、息巻いた。
「カトリックは、必ずしも人間性とは関わらない面が多いのよ。この司祭の問題だけではない。カトリックの現実なのよ。若い女性をたぶらかして自殺した司祭。犯罪を犯してメキシコへ逃亡した司祭。妻を亡くした後、男の子を誘惑した司祭・・・」。延々と例をあげながら語るエネルギーに圧倒された。

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