2014年11月16日日曜日

[NYへの旅] 21. 気ままなニューヨークの街歩き

11日目  3月26日(火)その1

今夜、ミュージカル鑑賞を控えているが、日中は街歩きをしようと相談。
特別に訪れたい場所があるわけではない。かつて訪れた場所へ行き、あるいは人々の動きを感じ、ニューヨークの空気を味わいたいからだ。ホテルから五番街に出て北へ歩き、セントラルパークを目指すことにする。

トランプ・タワーに入り、ピンクの大理石の壁面に流れる滝を見上げながら、贅沢な空間を確かめた。トランプ・タワーは30年ほど前に建設されたが、その頃すでにソニー・プラザが新しいニューヨークの名所になっていた。建築設計の段階で地上権を設定し、公共のためのゆとり空間を整えていたのだ。こうした息抜きの空間を確保すると、税制上の優遇措置があると聞いて感心したのだったが、すでにソニー・プラザの影はなく、プラザ・ホテルになっていた。地下のプラザ・フードホールの賑わいを眺めながら「昔の光、今いずこ・・・」のメロディを思わず呟いた。電気業界の熾烈な競争の中で針路を誤り、かつてのソニーの勢いがなくなったことを実感。「日本を代表する企業だったのに・・・」と、複雑な気持ちが去来した。

セントラルパークに入った。
木々は冬枯れていたが、わずかに芽がふくらみ始めている。まだ寒い時期だから、観光客はほとんどいない。
ときどき犬の散歩をしている人と行き交う。意外に若い人が多く、犬連れの顔馴染みと出会うと、散歩そっち抜けでおしゃべりに興じている。犬同志は飼主を見上げ、おとなしい。「忠犬ハチ公だわ」といじらしい。「ひょっとしたら、犬が取り持つ男女の出会いの場かも・・・」などと想像し、われながらおばさん的発想だと苦笑する。

枯葉を咥えたリスが目の前を横切り、大急ぎで木の上に駆け上って行く。迷うことなく慣れた動きで登る木がわかるのだから、エライ!
手元にある器械を手動操作する小型のヨットが、池に漂っている。誰が操作しているのかと辺りを探すが、姿はない。ヨットの近くで、アヒルが「グワッ、グワッ・・・」と鳴きわめいている。縄張り侵害だと抗議しているのだろうか。
岸辺のベンチで、男性の老人が新聞を広げている。時折り前を歩いて行く人を、眼鏡越しの上目遣いで眺めている。日向ぼっこをしながら、朝の日課だろう。

歩き疲れ、「ボート・ハウス・レストラン」で、カプチーノとフルーツ盛り合わせを頼んで小休息した後、セントラルパークからマジソン街を南へ歩く。

軒を連ねている高級店、ラルフローレン、ランバン、グッチ、シャネルなどのウインドウを覗く。売値の桁が違うし、店の入り口にはドア・ボーイが控えていてものものしい。懐を気にする者には所詮は縁のない店だし、シュウカツ(終活)とやらで身辺整理の必要があるお年頃だから、グッと欲望を抑え込む。夫は、首を振る妻を見ながら「欲しい物があったら、買うことは必要さ」と笑い、「安上がりのオクさん」と宣う。因みに、 旅先では夫の方が買い物の度胸がいいのが、わが家流だ。

ホテル近くのデリカテッセンでビーフ・サンドイッチを買い、部屋で寛ぎながら昼食。食欲がないけれど、3度の食事をきちんと食べないと落ち着かない夫に付き合う。
しばしの休息後、予約した夕食のレストランはブロードウェイの48wにあるので、「その前にブロードウェイ界隈を歩こう」と、再び外出することにした

家族でアメリカ生活を始めたとき、必要な品々を買い求めた百貨店Macy'sへ入り、ぐるっと一回り。「このコーナーでアイロン台を買った。毛布を買ったのもこの店だった・・」と懐かしい。

大勢の観光客が土産物店に群れている。安物の土産店が多く、「こんなの貰ったって、どうしようもないないわ」と思う。街の空気を斜に感ずるのは、自分の年齢を認識することだ。若い頃は何にでも興味を持った街歩きだったっけ。エネルギーが溢れる雰囲気に圧倒されながら、タイムズ・スクエアの雑踏を歩く。

大きなスクリーンの前で、手を振ったり、笑ったり、ジャンプしたり。「何をしているのだろう・・・」と近づくと、スクリーンに好奇心丸出しの自分の姿があった。「あれ、まあ・・・」と言いながら、夫が構えるスクリーンのスナップ写真に収まる。旅先では知っている人がいないのは有難い・・・。

予約したレストラン「La  Masseria」に、少々早く着いた。プレシアターの食事が供されるので知られ、すでに大半のテーブルに客が座って、アペリティフを楽しんでいる。彼らもブロードウェイのいずれかの劇場に出かける人たちだろう。

メニューを眺めていると、ウエイターは「いずれも大皿で、二人分になります」とアドバイスしてくれた。舌平目、パスタ(ラビオリ)、サラダを一皿づつと赤ワインを注文。
「アルコールが入ると、観劇中に眠くなるおそれありだけど、”料理に対して失礼だから・・・”(夫の常套句!)」と。何が理由であれ、夫が飲まない方が心配になる!
魚料理がお薦めのレストランで、舌平目の切り身が香草入りバターでソティーされ、あっさりとした味付けが美味しかった。たっぷりの量で堪能し、飲まなくても満腹で眠気を誘う感じになった。

入るときには気づかなかったが、レストランの隣りの広場には、9、11テロ事件(2001年)の犠牲者記念碑があった。ツイン・タワーの崩壊で、この地区の消防士が救出作業中に犠牲になったのだ。刻まれている犠牲者の名前を確かめながら、この事件以降の世界のテロの数々を思い出した。軍事的攻撃と報復を繰り返している世界状況は、かえって深刻になっている・・・。

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