2012年4月6日金曜日

伝説のシバの女王、乳香




【乳香の木から浸みだす樹液が、乳香】

サラーラ⑤ 3月27日(日)
ホール・ルーリの町にある「サムハラム遺跡」へ向かう。世界遺産に登録されている大規模な遺跡だが、まだ半分も発掘されていない。

紀元前3世紀頃から紀元後5世紀にかけて、カナ(現在のイエーメン)やシリア、ローマへ乳香・没薬が運ばれ、「乳香・没薬の道」の要衝だった地が、遺跡だ。
発掘された文字を刻んだ石から、イランの影響があったことがわかっている。
深さが25メートルもある枯れ井戸を覗き、シバの女王の宮殿だといわれる建物の敷地跡を眺め、貯蔵庫や住居跡などを辿る。
乾いた大地に容赦なく照りつける太陽を避けたいが、日陰を探すのは容易ではない。次第に、暑さに追われるように、急ぎ足になってくる。

シバの女王は、紀元前1000年頃、乳香・没薬、夥しい黄金・宝石をラクダに載せて、エルサレムへ行き、ソロモン王(紀元前971〜32頃)の知恵に心服したと伝えられる伝説上の人物だ。ガイドによると、コーラン27章では、旧約聖書よりも、さらに神秘化されているという。
また、イエーメンを中心に興ったサバ族の古代国家が、東西貿易で重要な役割を演じたが、シバの女王はサバ族の通商路に置かれた駐屯地の支配者だったともいわれている。伝説上の人物の話題は尽きない。

発掘された遺品が展示されている博物館に入ると、冷房が効き過ぎて寒い。乳香の香りが漂っている。1970年を境にして、それ以前の暮らしと、その後のオマーンの発展を記録した映像を眺め、急速な近代化を再認識する。




【乳香の木を見に岩肌を登る】

その後、マグセイルの海岸からイエーメンヘ通じる山路へ入り、自生する乳香の木を見る。乳香の木は、岩肌にしがみついている細い木だ。こんなに貧弱な木が素晴らしい香りをだすのだと、びっくりする。成長し始めて数年経ってから、木の幹にキズをつけ、浸み出してくる樹液が次第に固まってくる。ピンポン球の大きさの乳香になるのには3ヶ月かかるという。大量生産されるものではないから、とても貴重で、金と同じ価値で売買された時代があり、現在は1kgが75ドルで取引されるという。
昔から悪霊退治に利用されたし、キリストが誕生したときに東方から訪れた3人の博士がプレゼントとして捧げたし、中東の交易の大事なものだったのだ。
香りは火に炙って煙にし、それを衣服に染み込ませたり、家の中に漂わせたり。
オシャレな男性は、ターバンや衣服の前の刺繍部分に、香水のように使っている。
松脂のように浸み出している乳香を、記念に少しいただく。

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